米国年金受給者である社労士による日米年金受給の疑問や悩みを解決するホームページです。

日米社会保障協定

日米社会保障協定

協定の目的

  • 日米両国の年金・医療保険制度への二重加入の防止
  • 日米両国の年金加入期間を通算し年金保険料の掛け捨てを防止

年金・医療保険制度への二重加入の防止

基本的な考え方

日本の事業所に勤務する人などが、アメリカにある支店や駐在員事務所などに派遣される場合、両国の社会保障制度(年金・医療保険制度)に二重に加入しなければならないことがありましたが、協定により、いずれか一方の社会保障制度のみに加入することになりました。
協定前
協定の対象者は、原則として、その人が就労している国の社会保障制度のみに加入します。ただし、事業所から一時的(5年以内と見込まれる場合)に協定相手国に派遣される人は、引き続き派遣元の国の社会保障制度のみに加入します。例えば、日本の事業所から米国に派遣される人は、原則としてアメリカの社会保障制度のみに加入することになりますが、派遣期間が一時的であれば、引き続き日本の社会保障制度のみに加入することになります。
【協定発効後】
協定後

加入する社会保障制度

【日本からアメリカに派遣される場合】

日本からアメリカへ行き就労する人が加入する社会保障制度は、アメリカでの就労状況や就労期間により以下のようになります。

アメリカでの就労状況・期間加入する社会保障制度
日本の事業所からの派遣一時派遣
(5年以内と見込まれる場合)
日本社会保障制度
上記派遣者の派遣期間が、予見できない事情により5年を超える場合原則、アメリカ社会保障制度
(申請内容により認められれば、日本社会保障制度)
長期派遣
(5年を超えると見込まれる場合)
アメリカ社会保障制度
アメリカでの現地採用アメリカ社会保障制度

 
上記の考え方は、事業所で就労する人だけでなく自営業者にも当てはまります。例えば、日本の自営業者が一時的にアメリカで自営活動を行うのであれば、引き続き日本の社会保障制度に加入することになりますが、長期的にアメリカで自営活動を行う場合はアメリカの社会保障制度に加入することになります。また、日本で自営業をしていない人がアメリカではじめて自営活動を行う場合は、アメリカの社会保障制度に加入することになります。

日本の社会保障制度に継続して加入し、アメリカの社会保障制度への加入を免除されるためには、日本の社会保障制度(年金・医療保険制度)に加入していることを証明する「適用証明書」の交付を年金事務所から受ける必要があります。
なお、この「適用証明書」の交付を受けるためには、以下の条件を全て満たす必要があります。

  1. 日本の年金・医療保険制度に加入していること
  2. 日本の事業所との雇用関係が継続していること(自営業者については、米国でも引き続き自営活動を行うこと)
  3. 派遣期間が5年以内と見込まれる場合であること(自営業者については、就労期間が5年以内と見込まれる場合であること)
  4. アメリカに派遣される直前に、原則として6ヶ月以上継続して日本で雇用され就労していたこと

※ 「雇用関係が継続している」とは、日本の事業主に役務を提供し、その事業主が労務管理をしていることをいいます。

なお、日本で国民年金及び国民健康保険に加入していた人は、アメリカに住所を移すと国民年金の加入義務がなくなりますので、上記1.の条件を満たすために、国民年金に任意加入する必要があります。
 ただし、国民健康保険に任意加入制度はないため、国民健康保険に加入していない場合であっても、上記1.の条件を満たしているものとして取り扱われます。

【アメリカから日本に派遣される場合】

アメリカから日本に来て就労する人が加入する社会保障制度は、日本からアメリカへ行く人の場合と概ね同様の考え方に基づいて取り扱われます。
 
ただし、アメリカから日本に一時派遣される人が、アメリカの社会保障制度に引き続き加入する場合であっても、日本の年金制度への加入のみが免除され、医療保険制度への加入が免除されない場合があります。
このような制限が設けられている理由は、以下の通りです。

アメリカの公的医療保険制度(メディケア)は現役時代には給付がされないため、日本の医療保険制度への加入が免除されると、日本での医療費支出に際して日米両国のいずれからも保険給付が受けられないといった事態が生じます。

このため、日本での医療費支出に備えてアメリカの民間医療保険に加入していることを条件に、日本の医療保険制度への加入が免除されることになっています。また、配偶者や子などが一緒に日本に滞在する場合には、その全員が民間医療保険に加入していなければなりません。もし、本人及び家族の中に民間医療保険に加入していない人がいる場合は、本人及び家族の全員について日本の医療保険制度への加入が免除されないことになります。

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年金加入期間の通算

基本的な考え方

年金を受けるためには、一定の期間年金制度に加入して年金保険料を納めなければならないという期間要件が日米両国ともに定められています。ところが、いずれかの国の年金制度に一時的に加入した場合などは、加入期間が短いために年金を受けられず、納めた年金保険料が掛け捨てになってしまうことがありました。
協定発効前

しかしながら、協定により、日本とアメリカの年金加入期間を相互に通算することで、年金受給権を獲得できるようになりました。

年金加入期間の通算とは、両国の年金加入期間をまとめて一方の国から年金を受けるという仕組みではなく、それぞれの国で年金受給権を得るための期間要件を判断する場合に相手国の年金加入期間を通算するという仕組みです。したがって、年金を受けるときには、日米両国の年金制度に加入した期間に応じた年金を、それぞれの国から受けることになります。
協定発効後

なお、日米両国の年金制度に二重加入していた期間は二重に通算されることはありません。
二重加入

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日本の年金にアメリカの年金加入期間を通算する場合の取扱い

【年金加入期間の通算の仕組み】
アメリカの年金加入期間を通算して日本の年金を受ける場合には、アメリカの年金加入期間を日本の年金制度に加入していたものとみなして取り扱います。

具体的な通算の仕組みは以下のとおりです。

  1. 老齢年金の場合
    加入期間が25年以上必要という条件(期間要件)を満たしているかを判断するときに、アメリカの年金加入期間を通算できます。
  2. 障害・遺族年金の場合
    1. 被保険者期間のうち保険料納付済期間と保険料免除期間(保険料が未納でない期間)とを合算した期間が3分の2以上必要という条件(納付要件)を満たしているかを判断するときに、アメリカの年金加入期間を通算できます。
    2. 初診日又は死亡日に日本の年金制度に加入していなければならないという条件(加入中要件)を満たしているかを判断するときに、アメリカの年金加入期間を日本の年金制度に加入していたものとみなして判断します。

この他にも、厚生年金保険制度の加入期間が20年以上ある人に65歳未満の被扶養配偶者がいると老齢年金に加給年金額が加算される場合がありますが、このような加算を受ける場合にもアメリカの年金加入期間を通算できます。

【年金加入期間の通算による年金額】
協定に基づいて、アメリカの年金加入期間を通算して期間要件等を満たした年金については、日本の年金制度の保険料を納めた実績に応じて年金額が決まります。
 
具体的な年金額の計算の考え方は以下のとおりです。

  1. 年金加入期間に応じて額が決まる年金
    1. 老齢基礎年金、老齢厚生年金、遺族厚生年金などが該当します。
    2. 日本の年金加入期間に応じて年金額が決まります。
  2. 年金加入期間にかかわらず一定の額が決まる年金
    1. 障害基礎年金、遺族基礎年金などが該当します。
    2. 日本の年金制度に実際に加入した期間と理論上加入可能であった期間との比率に応じて年金額が決まります。
  3. 年金加入期間が一定期間以下でも期間をかさ上げして額が決まる年金
    1. 障害厚生年金、遺族厚生年金(加入期間が300月未満の場合)などが該当します。
    2. かさ上げした期間の割合及び日本の年金制度に実際に加入した期間と理論上加入可能であった期間との比率に応じて年金額が決まります
  4. 年金加入期間が一定期間以上の場合に一定の額が決まる年金
    1. 老齢厚生年金の加給年金額などが該当します。
    2. 日本の年金加入期間と本来必要な期間との比率に応じて年金額が決まります。

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アメリカの年金に日本の年金加入期間を通算する場合の取扱い

【年金加入期間の通算の仕組み】
日本の年金加入期間を通算してアメリカの年金を受ける場合には、日本の年金加入期間を、アメリカの年金制度に加入していたものとみなして取り扱います。

これにより、アメリカの年金加入期間と、重複する期間を除く日本の年金加入期間とを通算して、アメリカの老齢年金を受けるために必要な期間である10年(40クレジット)を満たしていれば、アメリカの老齢年金を受けることができます。

また同様に、障害年金及び遺族年金を受けるためにも加入期間等について一定の条件がありますが、この条件を満たしているかを判断するときに、日本の年金加入期間をアメリカの年金制度に加入していたものとみなして判断します。

ただし、この取扱いを受けるためには、最低でも1年6ヶ月(6クレジット)以上のアメリカの年金加入期間が必要となります。

なお、アメリカの年金加入期間は、実際にはクレジット(適用四半期)の単位で表された期間のことをいい、1年間(1~12月)の収入額に応じて最高4クレジット(日本の年金加入期間における1年に相当)まで取得することができます。したがって、実際にアメリカで就労した期間とアメリカの年金加入期間とは必ずしも一致しません。

【年金加入期間の通算による年金額】
日本の年金加入期間を通算してアメリカの年金を受ける場合の支給額については、アメリカの年金制度に加入した期間の実績に応じた額が支給されることになります。

なお、アメリカの年金制度に関しては、こちらのリンク先にその概要を示してありますが、アメリカの年金制度の詳細については、在日アメリカ大使館・領事館、または、アメリカの社会保障庁に直接お問い合わせください。

日本及びアメリカの年金を請求する場合の取扱い

日本に在住している人がアメリカの年金を請求する場合や、アメリカに在住している人が日本の年金を請求する場合は、それぞれ直接相手国の年金担当窓口に申請する必要がありましたが、協定により、居住国の年金担当窓口で相手国の年金を申請することが可能になりました。

(社会保険庁ホームページ 「日米社会保障協定」より引用)

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